|
メニュー
19
20
21
22
23
24
25
26
|
|
| 本題 |
ジャックは考える。
そう、彼と一緒にいられるのなら、それで満足なのだから。
「おい!芝田!」
そこで翔子の思考は途切れた。淳司の大声によって翔子は思考の世界から現実の世界に戻ってきたのだ。
「もしかして本当に具合が悪いのか、芝田?」
淳司は心配そうに翔子の表情を観察している。
「……うん、大丈夫。ちょっと考え事していただけだから」
ホントか?と疑いの眼差しを淳司は向けていたが、翔子の様子を見て大丈夫と判断したのだろう。照れた様に髪をばりばりと掻いた。
こういうふうに必要な時に人の心配が出来るのが淳司の美点だろう。
亜季が『だらしない』『いい加減』『頭の回転が極度に鈍い』と言いつつも(大体はあっているが)心の底では好意を持っているのはそこが遠因の一つであろう。
「ヤッホー、オミマイにきたヨ、ショウコ、アツシ!」
翔子の思考はジャックの底抜けに明るい大声で途絶した。
放課後、文学部の部室に五人が集まるのはすでに暗黙の了解のようなものだ。
本の香りで満たされた部室は本好きな人間にとっては精神安定剤のようなものだ。
たった一人、本嫌いな淳司が部室に集うのを最後まで嫌がっていたが、他の四人が部学部員であるため渋々折れた経緯がある。
しかし、大抵は個人の都合がつかないこともあり、部室に五人とも揃う事はあまりない……のだが、
「今日は珍しく五人揃っているんだね」
翔子は素直にそう思った。
五人とも全員揃うのは一週間に一度あればいい方だ。
あのあと、芝田翔子は結局保健室で寝込んでいた。ジャックと総司が見舞いに来たせいで(正確には総司だけが原因なのだが)顔が真っ赤になってしまった。それを総司が風邪をひいたと誤解して先生に『保健室で彼女を休ませて欲しい』と言った為に。どさくさに紛れて淳司も授業をサボろうとしたが、その企みは流石に先生に見抜かれた。
淳司はぶつくさ呟きながら教室に向かって授業を受けた。
「……でよ、古典の池田の野朗がさ……」
淳司はしかめっ面で、先程からずっと彼が池田先生から受けた特別課題の事について愚痴を言っている。木製の椅子から身を乗り出して真っ正面から翔子を見ている。
三十分近く愚痴を言われ続け、翔子は少々疲労を感じていた。小テストで一定の点に満たなかった者に課す、と前々から言っていたのだが。
|
|
|